耐候性鋼材の表面処理の種類とその特徴を解説!おすすめの技術も紹介
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耐候性鋼材(コルテン※鋼、コールテン※鋼)は、自然環境下で表面に保護的なさび層を形成し、内部の腐食を防ぐ特性を持つ鋼材です。そのため、橋梁や建築物、公共施設などで広く使用されています。耐候性鋼材を素地のまま(裸)使用する事は経済性やさびの美しいデザイン性などから人気がありますが、日本のように高湿度で気温差が激しい環境では、初期の流出錆などによる美観の損失や安定さびが形成しにくいなどが課題となる場合があります。
これを防ぐために適切な表面処理や対策を施すことが必要です。本記事では、耐候性鋼材の表面処理について詳しく解説し、特におすすめの技術についても紹介します。耐候性鋼材をより効果的に活用したい方はぜひご覧ください。
※COR-TEN(コルテン、コールテン)はUSスチール社の登録商標です
耐候性鋼材の表面処理とは?
耐候性鋼材の表面処理とは、鋼材の保護さび層の特性を最大限に活かしつつ、耐久性や美観をさらに向上させるために行われる技術です。耐候性鋼材を裸で使用した場合、初期のさびムラが起こったり流出錆や錆汁によって周囲を汚すリスクがあり、特に都市部では問題になることがあります。
また、高温多湿で周辺を海に囲まれた日本では使用状況により耐候性鋼材に安定的な保護さび層が形成されにくいこともあります。このため、日本国内で耐候性鋼材を使用する際は表面処理が有効な対策となります。
表面処理の目的
- 耐食性の向上:鋼材表面の緻密なさび層の形成を助け、鋼材の寿命を延ばします。
- 美観の維持:流出錆、錆汁を抑制し、美観を保ちます。
- メンテナンス性の向上:補修や清掃の手間を減らし、管理コストを削減します。
適切な表面処理を施すことで、耐候性鋼材の性能を最大限に引き出すことができます。
耐候性鋼材の表面処理の種類
耐候性鋼材の表面処理の主な種類として「さび安定化処理/さび生成促進処理」「有機金属不働態化塗装」「裸仕様(無処理)」が挙げられます。
さび安定化処理/さび生成促進処理
さび安定化処理とは、処理剤の表層の下で安定さびを生成させ、その後表層が徐々に風化し消失することで、最終的には安定さびが表面に現れるものです。代表的な工法にウエザーコート※法があり、プレパレン※処理と呼ばれる化成処理を行います。さび生成促進処理とは、安定さびの生成を助長する働きによって 耐候性鋼材の持っている耐候性能を早期に引き出すものです。日本の湿潤な気候では、初期段階の流出錆が周囲に与える影響を最小限にすることが求められます。これらの処理によって初期錆汁の流出が抑えられ、美観が保たれます。
※ウエザーコート及びプレパレンは日本パーカライジング株式会社の登録商標です
- 特徴:初期錆汁を抑え、周囲の環境を汚しません。さび層が安定化し、鋼材の耐食性が向上します。
- 適用例:橋梁、トンネル、大型構造物などのインフラ設備。
有機金属不働態化塗装
有機金属不働態化塗装は、導電性ポリマーを使用した塗装技術です。この技術では、鋼材表面に保護膜を形成し、耐候性鋼材のポテンシャルを引き出します。さらに、中塗りや上塗りによって多彩なカラーバリエーションを実現できるため、デザイン性が求められる施設や建築物にも適用可能です。
- 特徴:耐候性鋼材のポテンシャルを引き出し、耐食性を保ちながら、カラーバリエーションが可能。補修が容易で、既存の耐候性鋼材にも対応可能。
- 適用例:公園施設、動物園、建築物の外装など。
裸仕様(無処理)
裸仕様では、耐候性鋼材に表面処理を施さず、そのまま使用します。鋼材表面に自然に形成される保護さび層が内部腐食を防ぎ、さびの経年変化を楽しむことができます。ただし、錆汁の流出や錆の剥離により周辺環境を汚染するリスクがあるため、使用場所を選ぶ必要があります。
- 特徴:自然なさびの風合いをそのまま楽しめる。美観を損ねる場合があるため、環境への配慮が必要。
- 適用例:デザイン性が重視されるモニュメントや外装材。
プレパレン処理とは?
プレパレン※処理は、耐候性鋼材の表面に均一で安定したさび層を形成する技術で、さび安定化処理の一種です。この処理を行うことで、初期錆汁の流出を防ぎ、美観と耐久性を長期間にわたって維持できます。また、時間とともに自然にさび層が変化し、独特の風合いを楽しむことが可能です。
主な特徴
- 処理直後は、光沢のある層が一時的に表れますが、時間とともに光沢を失いポーラスな処理層により自然にさびが進行していきます。
- 初期の流出錆を抑え、周囲の環境を保護。美観を維持する。
- 日光の当たり具合、雨風などの自然環境により、錆の進捗に差が出てまだらな風合いとなってしまうことがある。
プレパレン処理の利点と課題
- 利点:初期の流出錆を抑え、周囲の環境を保護。美観を維持する。
- 課題:日光の当たり具合、雨風の自然環境の状況により、錆具合の進捗に差が出てまだらな風合いとなってしまうことがある。
- 適用分野:橋梁、建築外装、公園モニュメント、ランドスケープデザインなど。
耐候性鋼材の表面処理におすすめの「ウェザリングプロ」
耐候性鋼材の表面処理技術として、ウェザリングプロが注目されています。この技術は、導電性ポリマーを使用した保護皮膜形成技術で、耐候性鋼材の性能を最大限に引き出します。さらに、カラーリングが可能なため、意匠性が重視される建築物や公共施設にも適用できます。
主な特徴
- 美観と耐久性の両立:鋼材表面に保護皮膜を形成し、耐食性を強化。
- 環境に優しい材料:重金属を含まないため、安全性が高い。
- 多彩なカラーバリエーション:デザイン性が向上し、補修にも適応。
適用例
- 公園施設、都市型インフラ、建築外装、土木資材など。
詳細はこちらをご覧ください。
耐候性鋼材の表面処理について
耐候性鋼材は、その特性を活かすことで優れた耐食性を発揮しますが、適切な表面処理を施すことでさらにその性能を引き出すことが可能です。本記事では、さび安定化処理や有機金属不働態化塗装、耐候性鋼材の裸仕様、プレパレン処理といった技術を紹介しました。また、最新技術であるウェザリングプロを活用することで、美観と耐久性を両立した製品を実現できます。
テック大洋工業株式会社では40年以上にわたり、耐候性鋼材を使用した製品を製作しています。耐候性鋼材製品をご検討の際はご相談ください。